読書感想記「グローバル時代の人事コンピテンシー 世界の人事状況と「アウトサイド・イン」の人材戦略」

沿って | 2021年8月22日

世界各国の人事

この本は、ミシガン大学ビジネススクールの教授による著書です。同大学は、人事管理の分野で世界的な名声を得ているビジネススクールです。この本では、世界各地域・国においてどのような人事能力(この本の中ではコンピテンシー)が必要となるのか、綿密な調査を体系化して分析しているものです。地域は、アフリカ、豪州・NZ、中国、欧州、インド、ラテンアメリカ諸国、中東、北米、トルコで、独特の商体系を持つ日本について触れていないのは残念でしたが、それでも、なかなか分析対象とならない中東、アフリカ、トルコといった国が含まれているのは興味深かったです。

https://www.amazon.co.jp/グローバル時代の人事コンピテンシー-世界の人事状況と「アウトサイド・イン」の人材戦略-デイブ・ウルリッチ/dp/4532605369/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=カタカナ&dchild=1&keywords=人事コンピテンシー&qid=1627610116&sr=8-1

プロフェッショナルの人事能力とは

この本では、人事に求められる能力を、主に「信頼される行動家」、「組織能力の構築者」、「テクノロジーの提案者」、「人事のイノベーター/インテグレーター」、「チェンジ・チャンピオン」、「戦略的ポジショナー」と定義づけています。今どきの人事は、ただ単に労務管理や人員削減といった定型業務をするだけでは全く足りないということになります。有能な人事は、信頼を勝ち得て、会社の戦略に深く関与し、イノベーションやテクノロジーについても熟知していなければいけないと著者は言います。実際、人事管理の責任者は、会社でも非常に高い地位を占めていることが多いようです。学歴も、大学院卒が50%以上と、非常に高学歴になっているようです。

著者によれば、グローバル化が進む中で、全世界に共通する人事コンピテンシーと、ある地域に特有の人事コンピテンシーがあるということですが、信頼を勝ち得るということが全ての基本ということでした。ある意味結論としてはありきたりですが、それが各国の詳細な調査をベースとして分析されていることに意義がありました。国際化や人口動態の変化の中で多少の地域差はあるものの、人事はやはり人ということで、優れた組織を作るためのカギということになりましょう。

それにしても、このような人事スキルを全て兼ね備えているスーパーマンはいるのでしょうか。なかなか全てに精通する人材を発掘することが、一番の課題ではないかと思いました。翻訳も読みやすく、読んでよかった本でした。