読書感想記「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」

沿って | 2020年6月14日

Apple製品が好きな私が、Appleのすごさ、力の源泉はどこにあるのかを知りたくなったので図書館で借りて読んでみました。

その本がこちら「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」です。

著者は、ニューヨーク大学スターン経営大学院教授で、教鞭をとるかたわら、自らも起業し、また著名な大企業の役員を務めています。

その著者が、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)のビジネスモデルを分析するとともに、GAFAの強み(コア・コンピタンス)は何か、次世代のGAFAはどの企業になるのか、このような時代の中で生き残っていくための指針は何かを示しています。

GAFAの巨大な力

私も含めて、日頃GAFAの製品・成果に全く触れていない人は少ないのではないでしょうか。何かわからないことがあればGoogleで調べ、買いたいものがあればAmazonのレビューを見て比較検討し、ワンクリックで購入。SNSの一つとしてFacebookやInstagram(Facebook傘下)で友達と繋がり、Appleの製品を好んで使用するといったように。

GAFAは、数学的なアルゴリズムを使用したプラットフォームで、趣味・嗜好などの膨大な個人情報を瞬時に集積・分析します。まるでそれらの情報を自らの栄養とするように、どんどん精度の高い分析を行うことができるようになります。それが我々消費者一人ひとりの利便性と、GAFAの莫大な金儲けにつながっています。

GAFAの裏の顔

この本は、GAFAに対する別の一面も鋭く述べています。例えば著者はGoogleを全知全能の神に例え、意に沿わない会社に天罰(検索ページの先頭ではなく2ページ目以降に飛ばすこと。誰も見なくなりますよね)も可能になるといいます。また、GoogleやFacebookは、自らをメディアではなくプラットフォーム(ニュースに対して価値判断を行わない)であると定義づけています。このことは、既存のメディアと異なり、フェイクニュースであっても、無差別に掲載される危険性をはらんでいます。

何より、少数の億万長者と、大多数の労働者(この本では支配者と農奴という言い方をしています)を生み出し、ひいては中産階級と雇用を劇的に減少させる社会になってしまうことが脅威でした。

Appleについての分析

Appleについて言えば、人々が高級な贅沢品を求めるのは生殖本能に根ざしている根源的なものという前提でした。その前提に立って、Appleは高級ブランド品と同じ土俵に立つことで、持っている機能以上の価値を生み出したという点については、一部納得するものの、分析としては浅いと思いました。少なくとも私は、Appleのデザインやブランドを気に入っていることは確かですが、それだけでなく、機能的な優位性を重視しています。

GAFAに対抗できるのはGAFAだけという現状で、将来の世界はどうなっていくのか。この本では、次世代のGAFAとして、アリババ等の新興企業の候補名を上げていますが、どこも一長一短であり、GAFAを凌駕するまでには至らないように思います。

でも、(その究極的な意図は金儲けでありながらも)GAFAの恩恵を大いに受けている私達は、GAFAのない生活があり得ないのかなと思いました。

語り口がわかりやすく、翻訳も見事。読みがいのある本でした。