読書感想記「アリババ 世界最強のスマートビジネス」

沿って | 2020年7月5日

図書館の本棚を見ていましたら、この本に目が留まりました。

「アリババ 世界最強のスマートビジネス」

アリババって何?

私たちがアリババを耳にするのは、毎年11月のニュースが多いと思います。中国では11月11日が「独身の日」ということで、ショッピングデーとなるこの日には、アリババは1日で150億ドル(2017年)もの売り上げを達成するそうです。きらびやかな、PC端末にあふれた会場で、大画面に売上高がでかでかと更新されていく姿はすごいものがあります。

この本で、中国テック企業のBATH(バイドゥ・アリババ・テンセント・ファーウェイ)の実態の一部を知れるかなと思い、借りてみました。

アリババが成功した要因とは

著者の言葉を額面通りに受け入れれば、未成熟で、だからこそ足かせがない中国で、独自のビジネスモデルを構築したことが、アリババが成功した理由とのことです。「あらゆるビジネスの可能性を広げる力になる」というビジョンやミッションを最優先にしているのは、社会に役立つ企業でありたいということで、賛成できる面もあります。

しかしながらその陰に中国当局の過度な規制政策はなかったのでしょうか。Amazonやイーベイ、楽天でさえも撤退した中国ネット市場の閉鎖性と特殊性を考えると、中国政府の庇護があったからこそ、成功したのではないかと考えてしまいます。私はむしろ、撤退した側の企業からの失敗談や教訓を読んでみたい気がしました。

また著者は、アリババとAmazonとは全く違うのだと主張しますが、巨大プラットフォームを利用したインターネットコマースというビジネスモデルに大きな差は感じられません。著者も、アリババが米国や日本のような成熟した市場で成功することは、(少なくとも短期的には)難しいだろうと言っています。やはり私には、中国では通用しても、世界ではAmazonを放逐するほどの力は、アリババにはないだろうと思うのです。

この本は、ハーバード・ビジネス・レビューというビジネス雑誌から刊行されており、また、著者(アリババの前最高戦略責任者)がもともとは学者さんであることもあって、多分に経営理論・ビジネス論に重点を置いています。

そのため、経営戦略は勝者の論理に感じられ、中国当局との関係など、分析が不十分なところはあります。とはいえ、アリババの経営戦略がよくわかる良本でした。