読書感想記「ファーウェイと米中5G戦争」

沿って | 2020年7月11日

中国のスマートフォン企業であるファーウェイについて興味が湧いていたところ、またまた図書館の本棚でこの本を見つけました。

「ファーウェイと米中5G戦争」

ファーウェイの技術力と潜在性

この本では、本社への潜入取材に裏付けられたファーウェイの技術力のすごさについて述べています。ファーウェイは、5Gで多くの特許を取得し、次世代の6Gの研究開発にも余念がないとか。経済特区である深圳にあるファーウェイ本社は、壮大な規模で、まるで米国のシリコンバレーのようです。日本企業は残念ながらスマートフォンで勝ち組になれなかったですが、日本がどうすればよかったのかについても知りたいと思いました。

米中のしのぎを削る5G戦争

5Gでは、米国と中国で激しい覇権争いがあります。米国は、自国の発展を脅かす国又は企業には、えげつないほどの力を行使します。また、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)とBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)との対立の中で、米国と中国の経済ブロック化が進行していることや、米国と中国に追随する欧州や日本のスタンスについても述べられています。

特に、中国と米国の覇権争いは現在欧州が主戦場のようです。欧州各国はスタンスも多様ですが、地政学的なロシアの脅威、中国との親密度など、国家の政治問題がファーウェイの採用の可否に直結しているというのは、非常にダイナミックで面白かったです。

情報流出の懸念は?

懸念されている個人情報の流出について、この本では、結局のところ、情報を中国から盗まれるのか、米国から盗まれるのかの違いなのだという識者の見解が紹介されています。確かに、スノーデン氏が暴露したように、米国も決して褒められない諜報活動をしていますが、私は、基本的価値観を共有していない中国への情報流出の方が、より深刻だと思います。尖閣諸島をめぐる中国の振る舞いなどを見ていると、とても信頼できるパートナーになるとは思えません。とはいえ、実際にファーウェイと、その後ろ盾となっている中国共産党の力は脅威であり、この5G戦争に打ち勝ち、市場を席巻するのではないかという恐れを持ちました。

結局のところ、ファーウェイのスマホってどうなの?

著者はiPhoneが1年以上ファーウェイに後れをとっていて(特にカメラの性能差が著しいとのこと)、価格の割に機能がファーウェイよりも劣るとしています。私の大好きなApple製品がファーウェイに駆逐されることは考えたくないですが、先ほど述べたように、ファーウェイが5Gに関する特許を数多く押さえているので、市場動向も注視していかなければならないと思いました。

5Gのスマートフォンはまだまだ価格が高く、実際に普及するのはもう少し先のような気がします。とはいえ、5Gの技術を基礎としてIoT(モノのインターネット)時代はそう遠くない将来のことでしょうから、その際のファーウェイと中国は要注意です。背景知識もよくわかる良い本でした。