読書感想記「Uber ウーバー革命の真実」

沿って | 2020年7月18日

Uberって何?(Uber Eatsは見たことあるけど…)

この頃では、街でUber Eatsのリュックを背負って宅配をしているお兄さんをよく見かけます。飲食店の従業員ではなく、出前のサービスを別の人が行うということは聞いていて、変わったサービスだなと思っていました。でも、そのサービスの内容や生まれた背景はよく知らなかったので、この本を図書館で借りてきました。

Uber ウーバー革命の真実

Uberのビジネスモデル

日本でおなじみのUber Eatsは、Uberの持っている派生サービスのうちの一つで、この本ではサービスの本丸であるタクシー業務のマッチングサービスを中心に書かれています。背景として、車社会の米国で、タクシーが街中でなかなかつかまらず、利用するにも高額な料金を払わなければならない人々の不満があったことが述べられています。車社会である米国で、タクシー業界にそのような問題があったことは知りませんでした。

Uberには、運転手と乗客のどちらもが相互に評価されるシステムがあり、それぞれ紳士的な対応をするインセンティブがあることはユニークだと思いました。また、Uberを使えば使うほど、情報が集積して皆が使いやすくなる「情報に関する規模の経済」についても述べられています。この点はGAFAのような巨大プラットフォームにも通ずるものがあります。さらにUberは、「ダイナミック・プライシング」という天候や状況などで価格が変動するシステムを採用し、タクシーの需要と供給をAIによって適切に調整しているようです。これらはどれも経済学的な考え方で、私の現在の勉強にも参考になりました。

Uberへの批判

人々のタクシー業界への不満を背景に、これまでにない需要を掘り起こしたことは評価されることだと思います。一方で、傍若無人な態度で有名な共同創業者のトラヴィス・カラニックや、各国での法規制をものともしないUberの社風は悪名高く、各国で軋轢を引き起こしていることは聞いていました。その点も、もう少し詳しく書いてあるとよかったです。

日本での規制については僅かしか触れられていないのですが、規制の厳しい日本の中で、(私自身はUberは必要のないサービスだと思うのですが)どのように展開していけばいいのか、規制当局や日本の旧い政治との闘いについて、もう少し詳細に書かれているとよかったです。

とはいえ読みやすく、Uberという企業がよくわかった本でした。また、著者自身がUberを運転手として体験した項目もあり、ユニークかつ多面的な評価がなされていたのもよかったです。