読書感想記「組織行動のマネジメント」

沿って | 2021年4月4日

良質な組織論の教科書

私の職場での関心事は、どのようにしたら組織がうまく回っていくのか、よりよい人事とはどのようなものなのか、いい人材を採用するためにはどのような面接をしたらいいのかという、人的資源に関することです。このため、組織論について勉強したいと思い、この本を手に取りました。

この本は「組織行動論(Organizational Behavior)」について、非常に網羅的に、主要な論点は全て入れ込んでくれています。ホーソン実験やマズローの5段階欲求階層といった基礎の基礎から、組織行動の応用理論まで、幅広く取り上げられています。主に米国企業の分析が多いのですが、国際比較もしており、単一の理論が全く世界的に受け入れられるわけではないことも織り込んでくれています。

この本では、一見すると常識に見える事柄にも、きちんとした理論がベースにあることがわかります。例えば、組織構築のためには、対立は有害であるように思えますが、生産的コンフリクトと被生産コンフリクトがあり、生産的コンフリクトであれば、むしろ組織を活性化するといったように。

その他にも、研修、採用、個人の行動と組織の行動といった、様々な分析がまとめられており、組織行動論の基礎を学ぶにはうってつけの本だと言えましょう。翻訳もわかりやすく、非常によかったです。原版では具体的な企業名を挙げた企業分析が多く入っていたようですが、翻訳するにあたって、日本に馴染みの薄い事例は避けたのか、その部分が少ないのが残念です。